会社が破産すると未払賃金はどうなる?
概要
経営者の方が会社や事業を破産させる判断に至ったとき、「従業員に対する給料や退職金は払ってあげたいが、払える原資がなく、どうしたらいいのか。」と悩まれることは少なくありません。
破産申立時に従業員に対する未払給与や退職金が存在する場合には、未払賃金立替払制度を利用することで、一定の範囲でその支払いを国に立て替えてもらうことができます。
本記事においては、未払賃金立替払制度の概要と同制度を利用するための条件や手続きについて解説いたします。
目次
1.未払賃金立替払制度の概要
「未払賃金立替払制度」は、事業主(会社、個人事業主を問いません。)につき破産手続が開始されるなどしたために、賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、その未払賃金の一定範囲につき、独立行政法人労働者健康安全機構(以下「機構」といいます。)が事業主に代わって弁済する制度です(賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」といいます。)7条)。
また、法律上の倒産(破産など)だけでなく、労働基準監督署長が「事実上の倒産」であることを認定することにより、同制度を利用することも可能となる場合があります。
本記事では、紙面の都合上、法律上の倒産に限定して解説いたします。
2.未払賃金立替払制度を利用するための要件
労働者が同制度を利用するための要件としては、以下のとおりです。
- ①事業主が労働者災害補償保険の適用事業を行っていること(賃確法7条)
- ②事業主が1年以上にわたって事業活動を行ってきたこと(賃確法施行規則7条)
- ③同制度を利用する者が労働者として雇用されていた者であること(賃確法2条2項、労働基準法9条)
- ④賃金が払われていない労働者が、事業主が裁判所への破産手続開始等を申し立てた日(法律上の倒産の場合)又は労働基準監督署長に対する事実上の倒産の認定申請日(事実上の倒産の場合)の6か月前の日から2年以内に退職し、機構に未払賃金を請求すること
①のうち、「労働者災害補償保険の適用事業」とは、農林水産業の一部を除いて、労働者を1人以上使用するすべての事業が該当します。ただし、同居の親族のみを使用する事業は、労災保険の適用事業に該当しません。
③のうち、「労働者」には、正社員のほか、アルバイトやパートタイムの方も含まれます。
④のうち、同制度の対象となる未払賃金は、退職日の6か月前の日から機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払期日が到来している「定期賃金」(労働基準法24条2項に規定する、毎月1回以上定期的に決まって支払われる賃金(基本給、時間外手当等)で、所得税などの法定控除額を控除する前の金額)及び「退職手当」(就業規則や退職金規程等に基づいて支給される退職金)で、その合計額の80%相当が立替払額の上限となります。
賞与や解雇予告手当などは含まれず、また、未払賃金の総額が2万円を下回る場合は、立替払いがなされません(賃確法施行令4条)。
さらに、未払賃金の総額が上限額(退職日において30歳未満の労働者については110万円、30歳以上45歳未満の労働者については220万円、45歳以上の労働者については370万円)を超える場合は、その上限額の80%相当額までしか支払われません。
3.未払賃金立替払制度を利用するための手続き
同制度を利用するためには、事業主ではなく、労働者が機構に対して請求を行う必要があります。もっとも、実務上は、事業主も、裁判所に対して破産等を申し立てるにあたっては、労働者に対する未払賃金がいくらあるのかを計算して書面にて提出し、また、未払賃金が存在することを示す根拠資料として、賃金台帳や退職金規程等を併せて提出する必要があります。
同制度の請求手続きとしては、立替払いを求める労働者は、未払賃金立替払請求書と破産管財人からの証明書(一体の書式になっています。)を機構に提出することとなっています。